備忘録

元翻訳者。英語、本、映画、その他なんでも、日々、感じたことやメモなど書きます。

2020年の抱負 ~AI翻訳~

今、世の中はAI祭りとなっています。

それは翻訳業界も同じ。

昨年のある時期、AI翻訳を土台にして翻訳してくれという依頼が立て続けにありました。最初の数件は受けましたが、人間の間違いとは明らかに違う気持ちの悪い翻訳を修正するという作業は、自分の脳を破壊していくような感覚がありました。決して大げさではなく。本能的な、直観です。

周りの人を説得するためには、ちゃんと言葉で表せなくちゃいけないのかもしれませんが。

この前の紅白でAIの美空ひばりが新曲を歌っていましたが、なんだか違和感を感じました。敢えていえば、この違和感が翻訳で感じたものと共通しているかもしれません。感情がないというか、心がないというか。ヒューヒューと冷たい風が心に吹くような。

AIの美空ひばりをいいと思う人がいるとしたら、感性が違うのでしょう。感じ方はひとそれぞれだと思うので、そういう人もたくさんいるのかもしれません。

AI翻訳が今でも出回っているのだとしたら、その修正作業をしている翻訳者が少なからずいるのだと思います。その人たちはなんの違和感もなくそれを行っているのか?それとも違和感を感じつつ、仕事だから、と歯を食いしばって頑張っているのか?

実際に今後、AI翻訳が広がっていくのならば、そっちに加担する人たちがたくさんの仕事を得ることになるのでしょう。私のような頑固者の仕事は減っていくかもしれません。

ただ、AI翻訳を少しやってみて思ったのは、最終的に出来上がった文章を見て、その表現が自分のものではなく、表現の統一という意味でもなんとなく納得がいかずモヤモヤ感が残りました。ただ、はっきりとした間違いという訳でもないのでどっからどう修正したら良いかわからず、その状態で納品することになります。この感じをある翻訳会社に伝えたところ、そんなに出来は悪くないのでそんなに気にしないでいいとのことでした。質よりも、早く、安くできればいいということなんだろうと思います。

こんなことを愚痴っている間に、自分の翻訳力をアップする努力をして、AIにはできない翻訳が自分にできるように頑張るべきかもしれません。人間の翻訳でないとダメ、という分野、内容の文章や、翻訳会社はまだまだあると思うので。

昨年1年は、AI翻訳をやるやらないで翻訳会社とのせめぎあい(?)があったりして心がざわついた一年でした。最終的な結論としては、AI翻訳ではできない人間らしい翻訳を自分ができるよう努力する、それでも翻訳の仕事が減って食べていけなくなったら、違う仕事に職種変えしようと決心しました。進むべき方向が決まったので、少なくとも心のざわつきは今はありません。

今後どうなっていくかは未知の世界で、来年の今頃、自分が何をしているのか分からないという危機感もゼロではありませんが。

行けるところまで頑張ってみます。

2020年の抱負でした。