備忘録

元翻訳者。英語、本、映画、その他なんでも、日々、感じたことやメモなど書きます。

ベースアップとか忖度の翻訳

最近、ニュースで「今年、企業はベースアップするのか?」という話題を良く聞きますが、「ベースアップ」と聞くと、以前に英訳でこれが出てきて苦労したことを思い出します。

"base up"は和製英語で使えません。悩んだ末、"raise the wage level"という感じにしたような記憶があります。これでは「一律に」「全社員」のお給料を上げるということまでは伝わりませんが、全部書いたらあまりに説明文ぽくなってしまうかなと思い、そこまで訳出はしませんでした。今思うと、"as a whole company"とか"uniformly for all employees"とか付け足せばよかったかななどと後悔もしています。

一律に給料を上げるという考え方自体がそもそも欧米にはないと思うので、こういう単語は翻訳するのがとっても難しいです。翻訳していると日本と欧米の文化の違いを強く意識させられることがあります。こんな単語、日本語にはないよな~、とか、その逆もまたしかり。

去年、話題となった「忖度」もまさにこの例です。

【森友学園】「忖度」は英語でどう通訳された? 籠池氏会見で外国人記者に

この記事にもありますが、通訳はただ訳すだけでなく多くの説明を入れています。これが翻訳でもできたら良いのにと思いますが。ただ、忖度に関しては通訳がいろいろ説明しても分かりにくいですね。この記事に出てくる「行間を読む」というのも欧米人はしなさそうだし。日本で生きていくには「行間を読む」「空気を読む」ことは必須なのでしょうが、日本の外に出たら、あんまりこれはしない方が良い、というか相手がこれをしてくれると期待しない方が良いのでしょう。

昔、留学していた時に、アメリカ人の友人から「日本人は何を考えているのかわからない」と言われて、「日本はあまりはっきりと物を言わない文化があるから…」と私も日本人っぽい返答をしたことを思い出します。彼は日本人が好きで日本人の友達をたくさん作りたかったようなので、申し訳ない感じでした。

インタネットの影響などもあり、世界中の交流が激しくなり、世界的な競争も激しくなっていくなか、日本人同士で忖度している場合ではないような気もますが。話は戻りますが、一律に給料が上がるベースアップも、そんなことしていて大丈夫なのかしら?と感じるのは私だけでしょうか。

日本人にとっては、自分の考えを持って、それをちゃんと人に説明するのは難しいことなのかもしれませんが、みんながそれをできるようにならないと日本の将来は危ういような気がします。

空気読みまくっている自分への自戒の念も込めて。