備忘録

元翻訳者。英語、本、映画、その他なんでも、日々、感じたことやメモなど書きます。

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6/21~22に行われていた翻訳者のConferenceへ行ってきました。

http://ijet.jat.org/ja/site/index25 

こういう集まりに参加するのは初めてだったのでとても新鮮でした。

スピーカーは有名な翻訳者や英語関係の本をたくさん出されている先生ばかりで、セッションの内容も翻訳の勉強に関するものだけではなく、翻訳者のための資産形成、ストレスマネジメント、仕事場環境について、翻訳業界の現状と翻訳者の取るべき道、などなど盛りだくさんでした。

在宅で翻訳をしていると情報を得る機会が限られるので、様々な情報を得られた貴重な二日間となりました。

またlaw関係の翻訳についてのセッションでは、普段から疑問に思っていた契約書の英語の言葉の選び方や、法律関係の勉強まで実の濃い内容でした。

多くの人の前に出る機会も最近は全くなくて、会話という意味での英語にも全く触れていないので、そういう意味での自分の力が思った以上に落ちていることにも気が付き、若干の危機感を抱いたのも、気付けたと言う意味では良かったかもしれません。

 

翻訳は実力の世界。とにかく自分の力を磨き続けなければ、というのが全セッションを通しての感想です。

力を磨くためには、英語を読む力、書く力、法律関係の知識、PC関係の知識、そして何よりも日本語力、と磨かなければならない課題は山盛りのようです。

また、あるセッションで、翻訳という仕事をする目的をちゃんと考えることの大切さをお話されていて、とても共感できる部分がありました。どんな姿勢で翻訳の仕事を続けていくかは自分がこの仕事を続けていく上で、日々どんな選択をしていくかの基礎となるものになるだろうし、その各翻訳者の姿勢が翻訳業界全体にも良くも悪くも知らず知らずに影響を与えているものかもしれない、と。

山盛りの課題を目の前にして気持ちばかり焦ってしまいそうですが、ストレスマネジメントのセッションでは、問題を書き出して整理整頓する、と学んだのでこれからするべきことを書き出して頭の中の整理整頓をしたいと思います。

有意義な二日間でした。

翻訳も熱い世界です。

簿記

先日、簿記三級の試験を受けました。

いろいろな人から三級はそんなに難しくないから、大丈夫だよ!というアドバイスをいただき、結構、軽い気持ちで勉強を始めました。

確かにやっている内容自体はそんなに難しくないのかもしれません。

貸方借方を同じ金額にする、仕分けの仕方を覚える、科目の費用、収益、資産、負債、純資産のカテゴリー分けを覚える、試算表で試算する、精算表で精算、決算の時の処理、etc.一個一個をゆっくり考えていくと、なんてことない、というかパズルみたいで面白いとさえ感じられうるものかもしれない。。

なのですが、試験となり、すべての処理の仕方を覚え、時間内に正しい答えを表に埋めていくとなると話は別でした。もっとも自分にとって苦手だったのは、これをちゃんと計算し、表などに間違いなく書き写す、という作業。簡単に言ってしまうと、うっかりミス、ケアレスミスがとっても多く、「うっかり」なのでとても対策しにくい、そして「ケアレス」なのでその要因は主に自分の性質的なところから来ているという状況から、試験当日まで、この試験に対する恐怖心はかなりなものでした。

大手の専門学校の簿記のクラスを受けていたので、そこの結構難易度の高い予想問題を繰り返しやっていたので、本番では比較的に時間的、精神的余裕もあり、この勉強方法はなかなか良かったと自画自賛しつつも、やはりどうしても計算が合わない、それも何十万も合わない~という状況に陥り、試験終了ぎりぎり数分前にその原因が一つ見つかり、それも単なる数字の記入ミスでした。ただ、最終的に数字を合わせる前に時間切れとなったので、他にもうっかりミスがあった可能性は否めません。

試験日から2日経った今でも若干、試験疲れを引きずってはいますが、青色申告の際にも役に立ちそうだし、簿記三級レベルの会計用語なら翻訳文書に出てきてもまぁまぁ訳せる自信が持てるくらいにはなったので、苦しんだ分、実にもなったかなと思います。

ただ、試験結果がどうであれ、もう簿記関連の試験を受けることは一生ないと思います。ああいう作業が自分に向かないと気付いたことも大きな成果の1つでした。

あいさつの言葉について

英訳しにくいものに日本語のあいさつがあります。

昔から一番、気になっていたのは「いただきます」。

Webで検索すると、"let's eat"とか代わりの表現として出ていますが、"let's eat"と言う状況としては、まず全員が席に着きおあずけ状態で待っていて、さぁ、食べましょう!」とならなければなりませんが、実際に自分がアメリカにいた時に気づいたのは、全員が同時に食べ始めるということはあまりないということです。大体、気が付いたらすでにそれぞれに食べ始めている。食事の始まりはとてもさりげなくて、慣れないうちは気が抜けた感じを受けたのを覚えています。

ただ、クリスチャンの家庭とかパーティーなどでは、食べる前にしっかりしたお祈りがあって私の感覚ではこの長いお祈りを凝縮したのが「いただきます」という印象です。私の通っていてた保育園はキリスト教だったのですが、食べる前になが~いお祈りがありました。たしかお百姓さんとかいろいろな人に感謝をし、この食事をもたらしてくれた神様に最後に感謝して「アーメン」で、やっと食事を開始します。母親が授業参観に来たときそのお祈りの長さにびっくりした、というのは今でもよく言っています。

たぶん「いただきます」の中にはこの長いお祈りが凝縮しているに違いない、と私は思います。

敬虔なキリスト教の家庭では毎回の食事の時にこの長いお祈りをしてから食事が始まります。静かなひとときです。私は特に宗教家ではないですが、お祈りの時間は好きです。これと比べると「いただきます」はとってもシンプルな感じです。

もうひとつ訳しにくいとよく話題に出るのが、「おつかれさま」です。

仕事の終了後や何かを頑張ったあとに便利に使える「おつかれさま」ですが、こんな便利な表現は英語にはないと思います。英語の場合は、その都度、状況に応じて言葉は変わってくるし、ただ単に"Bye!", "Hi!"だけの時もあります。なんて乱暴な、という気もしますが、どんな状況でも「おつかれさま」のひとつで済んでしまう日本語というのも大雑把な感じで、「あいまいでも雰囲気で汲み取ってね」という日本語ならではな気がします。

freelance

先日、ネイティブの友人に「最近、フリーで翻訳を始めました」と伝えるために英文を書いていた時に、"freelance"は、「フリーランサー」という名詞だけでなく動詞としても使えるということに(遅ればせながら)気が付きました。

"get started as a freelance translator"、"I freelance as a translator."とか、

"He's freelancing for several translation agencies." (Longman)などは、使い方としてすぐ思い付きますが、

"I freelance a magazine article.": to produce, sell, or accomplish as a freelance (http://dictionary.reference.com/browse/freelance)

という他動詞的な使い方は見慣れない感じがしつつも、結構、使われている表現のようです。

そうは言っても、普通に、"work freelance"「フリーランスとして働く」という表現が一番、落ち着いて使える気もしますが。

"free lance"で辞書に載っていたのは、

「(中世の)傭兵、野武士:いかなる国家、党派、主義にも所属せず自由に報酬をもらって軍務についた;多くは騎士階級」(ランダムハウス英和大辞典)

かっこいいですね。特に「自由に報酬をもらって」というところが魅力的です。

ネットで調べる限りでは、やはりフリーランスという働き方はアメリカなどと比べて日本はマイナーな感じです。農耕民族の日本人にはなかなか受け入れにくい面もあるのでしょうか?しばらくはフリーランスに関しての情報は日本の外にも取りに行った方が豊富な情報が得られそうです。

「~に基づき」「~に従い」

契約書を訳していると同じ表現が繰り返し出てきます。

特に「~に基づき」はよく目にする表現で、時には1文の中に2回も3回も出てきたりしてあまり繰り返すと気持ち悪いこともあります。

そこで今日は、これまでに出会った表現をまとめてみたいと思います。

「に基づき」
under the law of「の法に基づき」
hereunder「本契約に基づき」*「本契約」の部分はその文書そのものの書類名次第で覚書、規約などなど変わってきますが。
based on  * 一般的に一番よく出てくる表現ですが、契約書ではそんなに頻繁には使われていない印象があります。
in accordance with *「~に従い」という表現でよく見ます。

 

最後の「~に従い」という言い方もよ~く見かけるので調べてみました。

「~に従い」
upon the term of「の条件に従い」
subject to the terms of「の条件に従い」
according to the documentation「当該書類に従い」
as provided below「下記の定めに従い」* "as provided ~"「~の定めに従い」という使われ方であちこちで見ます。こんな英語表現がすぐ出てくるようになったら気持ち良さそうですが、なかなか出てはこない、というのが私の現状です。
pursuant to Article X 「第X条に従い」

まだあるかもしれませんが、これまでやってきた中で思い出せるのはこんな感じでしょうか。同じ表現でも文脈によってその意味するところは微妙に違ってきたりして、それによって選ぶべき英語も変わってくるのかと思いますが。

また、最初に書いたように繰り返しがあったりするとよけい内容を汲み取る必要も出てくるし、他の人の訳を見ていると原文日本語が跡形もなくなっている英訳がきれいで逆に内容を正確に伝えていたりすることもあるので、工夫が必要なようです。同じ表現の繰り返しが多いと言われている契約書でさえも、やはり意味を取って訳す力が分かりやすい翻訳文を作れるかどうかの決め手となるような気がします。

海賊とよばれた男

今、読んでいるこの本、

海賊とよばれた男 上

海賊とよばれた男 上

 

  図書館から借りましたが、すごい人気でずーっと前に予約して、図書館からお知らせが来たときにはいつ予約したのか、なぜ自分がこの本を予約したのかが思い出せないくらいでした。

たぶんテレビか雑誌かの推薦本だったのだろう、とは思いますが。

第二次大戦後の混乱期に、既得権益と戦いながら会社を復興させていく石油会社の社長の話です。出光興産の創業者をモデルにしたということですが、実話だと思うと驚きます。個人の利得よりも国のためにひたすら働くのですが、国内の石油団体からは目の上のタンコブ的な存在となりいじめられ村八分にされていますが、そんな中、主人公の姿勢に感銘して助けてくれるのはなんとアメリカのGHQの人たちでした。

まだ読んでいる途中なので、今後、どんな展開になるのかはこれからのお楽しみなのですが。

少し前にテレビで「鈴木商会」のドラマがやっていましたが、これもちょうど同時期の明治に創業された会社です。こちらは短命だったようですが、この会社の流れを汲む会社が今もたくさんあるようです。(ウィキペディアによると)

明治の新体制になり世の中が大きく変わっていく中で、第一次世界対戦(1914-1918)、関東大震災(1923)、第二次世界大戦(1941-1945)と一連の災害、戦争が次々と起きたこの時代に生きた人たちはどんなことを思って日々暮らしていたのだろう、と思います。

今のNHK連続テレビ小説花子とアン」もやはり同時期のお話です。主役の花子は「赤毛のアン」の翻訳者ということもありとっても興味あるので、この番組の元となった本、アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫) 

をちょうど読んでいたところに図書館からお知らせが来て、今、「海賊と~」に切り替えて読んでいますが、どちらも時代背景が似ていてすごい偶然だなぁと驚きます。予約してたことさえも忘れていたくらいなので、余計に。自分が引き寄せているのか、それとも今どきが明治ブームなのか。

その時代にくらべたら今はとても平和な安定した時代です。でも昔の人たちが創ったいろいろなものを土台にして今の世の中ができていると思うし、小説を読んでいるとその時代の人たちの熱い思いがすごく感じられます。こんなのんびりした時代に生きる自分も少しは世の中のためになることができたらな、と思う今日この頃です。

「その他のX」と「その他X」

「その他のX」と「その他X」の訳し分けについて 、ビギナーのための法律英語という本の中で分かりやすい解説を見つけました。

「の」の一文字がつくかどうかで意味が変わってくるというお話です。知らないとなんとなく訳してしまいそうですが、本当はちゃんと考えなければならないポイントかと思います。

この本によると、

「A, B, C, その他のX」と言った場合、「A, B, Cを含むより広い概念」英語で言うと"A, B, C and other elememts that come under X"

「A, B, C, その他X」だとA,B,CとXは並列、対等の関係です。

 そう考えると、和訳の場合も「A, B, C and D」と出てきてすぐに「A, B, CおよびD」とやってしまうのではなくて、 気を付ける必要があり、それは「ABCその他のD」または「ABCその他D」と訳した方がいい場合などもあるからです。

さらに"Including"も同様の意識をすることですっきりした訳文ができるということでした。すぐに「を含む」という訳にしがちですが、その他の~、その他~、とすることで滑りのいい文章になりそうです。

ただ、ここまで分かった上での自分の文章読解力の問題となるのでしょうが、原文を読んで「A,B,C」と「X」が並列なのか、「X」がより広い概念となるものなのかを判断するのがとっても難しいことがあります。内容などから考えてその単語が同質のものであれば並列と考えて、見分ける時の一つのポイントとはしていますが、それでもう~ん。。と悩んでしまうことは多々あります。今のところ、自分にとってはここが最も難しい点ではあります。